本データは、辰巳院長が当院に着任した平成3年6月〜平成15年末までのデータとなっております。




 当院では、この12年間に来院された不妊期間1年以上の夫婦8223組のうち4529組、55%がすでに妊娠されています。不妊外来の妊娠率は、20年ほど前の報告では25%程度、10年前の報告では35%程度であることをみれば、最近いかに不妊治療が進歩し、妊娠できる確率が上がったかがおわかりいただけると思います。



  さて、この8223組のうちには、まだ治療期間がほとんどないカップルもいます。そこで、2年以上前から来院しているカップルの妊娠率を調べてみました。
 2年以上前に初診されたカップルの60.4%が妊娠されています。
 このグラフのうち治療中断というのは途中で来院されなくなった方の事で、不妊治療をやめた方、転居などで当院から転居先の不妊外来に紹介した方などが含まれます。ですから、治療中断例の中にもすでに妊娠している方もおられます。おそらく2年前に当院不妊外来を受診した方の65%以上はすでに妊娠しておられるものと考えられます。




 さて、不妊外来でせっかく妊娠しても流産してしまう方もいます。当院不妊外来で妊娠された方のその後の妊娠経過について調べてみました。


 一般に妊娠例の15%は流産してしまいます。当院不妊外来では、妊娠例の23.5%が流産になっており、通常の妊娠例に比べると流産率が高いといえるかもしれません。しかしこれは、不妊治療をしたから流産率が上がったというのではなく、不妊治療で妊娠した方の年齢が、一般の妊娠年齢より高いことが流産率の高い最も大きな原因だと考えられます。




 さて、色々なところで強調していますが、不妊外来で妊娠できるかどうかを左右する最も大きな要因は妻の年齢です。次に当院初診時の妻の年齢と妊娠率の関係を見てみました。


 妻の年齢が35歳を過ぎると妊娠しにくくなりはじめ、40歳を越えると随分難しくなってきます。また、一方では、年齢と共に流産する確率も高くなります。下のグラフは、当院初診時の年齢と流産率との関係です。


 25歳未満の場合にも流産率がやや高いのですが、症例数が少ないので何とも言えません。25歳以上の場合には年齢と共に流産率が増え始め、特に40歳以上の場合には、妊娠しても半数以上の方が流産してしまいます。 そこで、不妊治療により妊娠して、流産せずに、元気な赤ちゃんを連れて帰れる確率(生産率といいます)と初診時の妻の年齢との関係を見てみました。


 妻の年齢が40歳を越えてから不妊外来を受診した場合、元気な赤ちゃんを出産できる率は11%になってしまいます。もし、皆さんの人生計画で子供をつくろうという計画があるのなら、あまり長い間避妊したりせずに、できるだけ若いうちに妊娠するようにしてください。




 次に不妊期間と妊娠率の関係について見てみました。



 不妊期間が長くなるにつれて妊娠できる確率は下がってきます。次に、不妊期間と生産率(治療により赤ちゃんを連れて帰れる率)の関係を見てみました。



 当院のデータでは不妊期間が5年以内なら、46%の方が元気な赤ちゃんを生むことができています。少し不妊期間が長くても思い切って不妊外来に行けば、妊娠、出産できる可能性は結構あります。




 さて、当院では、一通りの検査で特にはっきりした不妊原因を認めない場合には、まずタイミング指導を行います。タイミング指導をはじめてから、どれくらいで妊娠できるかについて調べてみました。



 タイミング指導で妊娠できる方のほとんどは、12ヶ月以内に妊娠しておられます。タイミング指導をはじめて12ヶ月以上たっても妊娠しない場合には、タイミング指導では解決できない不妊原因があると考えられます。この場合当院では次のステップとして、人工授精に進みます。何回目の人工授精で妊娠できたかが次のグラフです。



 人工授精も、10回目を過ぎると妊娠できる確率が随分下がってしまいます。すなわち、人工授精で解決できるような問題のあるカップルは、人工授精10回目位までに妊娠でき、これでも妊娠しない場合には、更に進んだ治療、体外受精や顕微授精などの生殖補助医療技術(ART)が必要となる可能性が高いのです。



 体外受精や顕微授精などのARTも、5回以上になると妊娠例が少なくなってきます。もちろん十数回目の体外受精で妊娠するケースもありますが、ARTを5回以上しても妊娠しない場合には、今後どうするかよく主治医と相談する必要があるでしょう。最近では胚盤胞移植などが有効な手段として行われています。 さて、次のグラフは当院に来院されたすべての患者さんがどうなったかを示したものです。






 当院では「それぞれの患者さんの必要最小限の治療での妊娠」をめざした結果、来院されたすべての患者さんの約32%はタイミング指導などの一般不妊治療で妊娠、人工授精まで考えた場合には42%の患者さんが妊娠、体外受精や顕微授精まで考えた場合には55%の患者さんが妊娠されています。

 現代の不妊治療においても、やはり中心は一般不妊治療であり、一般不妊治療では妊娠できない患者さんにとっては、人工授精や体外受精、顕微授精が非常に有効な治療になる事がおわかりいただけると思います。
 以上当院の不妊外来のデータを様々な角度から検討してみました。



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