梅ヶ丘産婦人科 辰巳賢一

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 ARTの臨床における胚凍結保存の必要性は以前より指摘されているが、日本の1998年のデータでは、ART実施377施設中、胚凍結保存を実施しているのは158施設、41.9%にすぎない。当院では、1996年から胚凍結プログラムを導入し、2000年末までに527例に胚凍結保存を行い、579例に凍結胚移植を行なってきた。胚凍結保存を行なったのは、この間の採卵例数1437例(IVF 882例、ICSI 555例)の36.7%にあたり、凍結胚移植はこの間の胚移植例数1719例の33.6%にあたる。胚凍結保存の有用性については様々な報告があるが、今回、当院のデータを基に再検討した。

  胚凍結は前核期または、4~8細胞期に緩慢凍結法を用いて行なった。凍結保存の技術は確立されており、融解時に胚の質が落ちたために移植できなかった例はない。胚移植は、ホルモン剤により作った人工周期に行なっている。当院の凍結胚移植による妊娠率は、28.1%、臨床妊娠率は23.4%、生産率は16.9%である。

  当院のこの期間の新鮮胚を用いた体外受精、顕微授精の臨床妊娠率は、採卵あたり18.5%であるが、凍結胚移植による妊娠を加えると採卵あたり25.3%となり、凍結保存を行なう事により採卵あたりの臨床妊娠率が6.8%増加した。また40歳未満の症例に限っても、凍結保存を用いる事により採卵あたりの臨床妊娠率が22.3%から30.0%へと7.7%増加した。このように、胚凍結保存を導入する事により、採卵あたりの妊娠率が大幅に向上することが確認された。

  当院では1998年にARTにより3例の3胎ができた反省から、1999年以後は多胎妊娠、特に3胎妊娠を避けるために、35歳未満の症例では新鮮胚の移植胚数をできるだけ2個として残りの胚を凍結保存している。その結果、その後の2年間の新鮮胚移植による分娩例93例中双胎は18例(19.3%)3胎は1例(1.0%)のみである。凍結胚移植を用いる事により、採卵あたりの妊娠率を下げることなく移植胚数を制限でき、多胎妊娠を減らす事が可能であった。

 新鮮胚移植と凍結胚移植の移植あたりの臨床妊娠率は、それぞれ21.7%、23.4%と凍結胚移植の方が高かったが、40歳未満で比較すると、25.5%、25.5%と両者に差を認めなかった。凍結胚移植では、ホルモン値が正常な周期に胚移植を行なえるため妊娠率が高くなるといわれているが、当院のデータでは凍結胚移植と新鮮胚移植の妊娠率には差を認めなかった。

 過排卵刺激により多くの卵胞ができた症例では、全胚を凍結保存しその周期に胚移植を行なわないようにすることにより、OHSSを回避することができる。当院ではOHSSを避けるため全採卵の14.2%は全胚凍結保存を行なっている。その結果、入院を要するOHSSが起こったのは1437例の採卵中6例(0.4%)のみであった。

 以上のように、ARTに凍結保存を導入する事により、すべての胚に妊娠のチャンスが与えられるばかりではなく、採卵あたりの妊娠率が高くなり、多胎妊娠が減り、OHSSの発生を極めて低率に抑えうる事を確認できた。現代のARTの臨床において、胚凍結保存は必要不可欠なものである。

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