私は、不妊治療の基本方針は「それぞれの患者さんの必要最小限の治療で妊娠を成立させること」だと考えています。それでは、「それぞれの患者さんの必要最小限の治療」というのはどうすればわかるのでしょうか?

 実は、「それぞれの患者さんの必要最小限の治療」をあらかじめ知る方法はないのです。一通りの検査が終わった後でも、両側の卵管閉塞や、重症の男性不妊といった例外を除けば、それぞれの患者さんが、一般不妊治療で妊娠できるのか、体外受精や顕微授精まで必要なのか、あるいは、現代の不妊治療ではどうしても妊娠できないのかを知る方法はないのです。

 それでは、どうすればそれぞれの患者さんを必要最小限の治療で妊娠してもらうことができるでしょうか?

 その答えは「最も弱い治療から開始し、妊娠するまで徐々に治療をステップアップして強くしていく」ということです。

 当院では下図に示す様な治療方針で、不妊治療を行っています。

 ただ、もちろん、「体外受精までは考えていない」とか、「人工授精も受けたくない」といった患者さんの希望や、これまでの治療歴、年齢などによって、この治療の流れをとらないこともあります。

 当院のこの不妊治療の基本方針は「ステップアップ方式」と呼ばれており、患者さんに「必要最小限の治療で妊娠してもらうため」、そして、「終わりのないマラソンレースと言われる不妊治療に1つの完了点を設定するため」の最も適切な治療方針だと考えています。


 まず当院では、来院された不妊患者さんに一通りの検査をして、原因を調べます。皆さんは検査すればほとんどの場合原因がわかると考えておられるかもしれませんが、実際には原因不明という場合も非常に多いのです。

 さて、原因がわかった場合には、原因に対する治療を行います。そして、その治療と並行してタイミング指導(いつが排卵日か調べ、その日に夫婦生活をしてもらう)を行います。原因不明の場合にはタイミング指導のみを行います。妊娠するためには排卵日頃に夫婦生活をする必要があります。

 ところが不妊患者さんは、

 ・排卵障害などにより自分で排卵日を予測できない場合が多い
 ・頚管粘液などの問題で妊娠可能な日が少ない場合が多い
 ・性交回数が減っている場合が多い
 ・実際と違う日を排卵日と思いこんでいる場合が多い

 ため、排卵日頃にうまく夫婦生活ができていないことが多いのです。そこで、約半年間のすべての排卵日に妊娠のチャンスがあるようにタイミング指導をするのです。この段階ですでに多くの方が妊娠されます。

 これで半年妊娠しなければ、通常の夫婦生活では解消できない不妊原因があると考え、次のステップ「人工授精」に移ります。人工授精では、通常の夫婦生活に比べて妊娠する確率が2倍になると言われています。人工授精は5回を目安にしています。
 通常の人工授精では妊娠しない場合、排卵誘発剤を使って、いくつかの卵子を排卵させて人工授精を行います。卵子の数を増やすことにより妊娠を期待するのです。

 人工授精で妊娠しない場合には、体外受精に移ります。当院では体外受精で、1回の採卵あたり約3割の方が妊娠されます。

 体外受精で受精しない場合には顕微授精を行います。顕微授精を行うと、体外受精でも受精しなかった方の8割以上は受精し、胚移植を行えます。1回の採卵あたり約3割の方が妊娠されます。
 
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 我々不妊治療医は、すべての患者さんに何とか妊娠していただきたいと思い、頑張っています。しかし、現実には不妊患者さんの2〜3割は、どうしても妊娠できません。体外受精や顕微授精を5回以上繰り返しても妊娠しない場合には、不妊治療を継続するかどうかについてよく相談しましょう。

 梅ヶ丘産婦人科不妊外来の治療方針を述べました。私は、この方法が最も適切だと考えていますが、不妊治療の進め方は病院や担当医によって様々です。不妊治療の進め方の一つの例と理解して下さい。

 梅ヶ丘産婦人科図書館の「一般不妊治療におけるステップアップ」も参考にして下さい。 さらに詳しい説明が不妊検査不妊治療にあります。



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